恋の障壁は0.1㌧!〜痩せたら大好きな彼に復讐しようと思ってました、だがしかし〜

13.

「優希と連絡取れなくて、半狂乱になっていた俺に誠司が提案してくれた」

 ずっと側にいたかった。けれど焦ることで、拗れた縁を断ち切るようなマネをしたくなかったと、苦しそうに言う。

「ほんとうは旅行先で、優希にデータ取りに同行して欲しいと頼むはずだった」

 しかし、協力してもらえる医師から手術の連絡を受けて全米やヨーロッパを飛び回る、過酷なスケジュール。

「優希に誠司の研究室への出向してもらうのは、同行が無理だったときのビバーク案だった」

 元々あのアプリは、私がダイエットしたくなったときのために武尊が考えてくれたシステムだという。

 そして。

「婚約パーティは、俺と優希のために誠司が提案してくれたんだ」

 そうだったの?!

「だが、そこで想定外のリアクションがあった。……優希がショックを受けたことだ」

『優希ちゃん、絶対にあれ自分との婚約だと思ってない』

 そのとおり。
 しかし、そこで森君が機転をきかせた。
 私にあのアプリを使わせてることだったらしい。
 
『天啓を受けた。ショックを受けている優希ちゃんに、いい女になって誠司にざまぁしてやれよってハッパかけたんだ』と。

 森君としては、あらかじめデータ化しておいた、武尊の表情動作リアクションで回す予定だったらしい。

 しかし、とうの武尊がいやがった。
 あらためて、武尊と森君は緊急ミーティングを行う。

 結果。
 データ取りの合間に急遽、武尊がDatingの中の人を演じることになった。

「アバターでも、優希の傍に俺以外が四六時中いるのは、耐えられない」

 武尊の、アバターに対する嫉妬が強い。
 そこまで、この人は私が好きなんだ。

 幸福で、令嬢に灰色にされたままだった世界が突如、極彩色を帯びる。

「Vチューバー名にも意味があるんだ」

 心なし頬を染めながら、教えてくれる。

「dateにはロマンチックな一対一の時間を過ごす、という意味もある。datingは、付き合うかどうか決めようとしている関係の場合にも使う」と。

 そんな意味があったの……。
 嬉しい。
 けれど、苦い感情も生まれてくる。

 
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