恋の障壁は0.1㌧!〜痩せたら大好きな彼に復讐しようと思ってました、だがしかし〜

15.

「優希が無理するくらいなら、痩せなくても全然よかった」

 優希がお姫様抱っこを希望するなら、俺が筋トレすればいいんだし、と武尊は言う。

「だって、俺は優希の中身に惚れたんだから。体だって! エクボの出るほっぺも、すべすべな肌も、抱きごこちのよさも、全部癒しだ。……でも、優希が望むなら、ダイエットをサポートしたいな、って思ってはいた」

 栄養バランスのいい食事も作ってあげたかったし、朝や夜のワークアウトも付き合ってあげたいと思っていたと。

 耐え切れず泣いてしまう。

「優希っ、どうした?!」
「武尊がっ、すっ、スパダリ過ぎるがらぁ……!

「優希に俺ともう一度付き合っていいか、考えて欲しかった」 

 切なそうな武尊の口調に、自分も彼を苦しめていたことに気づく。
 第三者の言葉を鵜呑みにし、彼に確認しようともしなかった。

 武尊の腕が緩まったので謝ろうとしたが、彼にひざまづかれてしまう。 
 おろおろしているうちに手をとられる。 

「愛してる。ずっと好きだった。すぐに結婚したい。なによりも二年我慢してたから、めちゃくちゃ抱き潰したいけど。まずは恋人から始めさせてください」

 後半とんでもないことを宣言された気がする。

 しかし、武尊は真剣な眼差しで、右手の薬指に恋人としての指輪を嵌めてくれ、左手の薬指にはキスをしてくれた。……恋人のときにしてくれた、いつもの仕草だった。

 武尊に抱きつく。

「私も武尊が好き、大好き! 結婚する。でも、あらためて恋人にもなりたい」

 武尊が少しだけ距離を作り、私の瞳を覗きこんできて、掠れ声で囁いた。

「優希、キスしていい?」
「うん」

 久しぶりのキスに夢中になっていると。


「おーい、お二人さん。婚約パーティしていい?」

 森君がシャンペン、万里子さんがグラスを持ちながら、入り口に現れた。
 彼らの後ろには両家の家族やケータリングの面々が。

「OK!」

 武尊は陽気に返事しながら、私をヒョイと立たせてくれ、またも抱きしめてくれた。
 

 ◇■◇ ◇■◇

 アプリは武尊らしさを完全に払拭してリリースしたが、大ヒット商品になった。

「最高のテスターのおかげでね」

 ベッドの中で武尊がキスしてくれた。

                ——fin.




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