嘘つき義弟の不埒な純愛
◇
「すーずーさん!ここいいですか?」
お昼休みになり、休憩スペースで弁当を食べていた寿々のもとに、例の後輩がやってくる。
「どうぞ」
彼女は寿々の隣の席に腰かけ、コンビニで買ってきたと思しきカップスープとサンドイッチをテーブルに置いた。
ハムサンドにかぶりつき、スープを啜るとまずひと言。
「ねえねえ、寿々さん。篠原係長とはどこまで進んでるんですか?」
「進んでる?引継ぎの話?」
「違いますよ!もう篠原係長から告白されたんですかー?」
「え!?」
思いもよらぬ質問をされて、寿々は椅子から飛び上がりそうになった。
休憩室にふたりきりで本当によかった。
「みーんな言ってますよ。篠原係長は寿々さんに気があるって」
「誤解だよ。仕事だから!」
「えー!でも、寿々さん美人だし、篠原係長とお似合いですよ?」
「美人だなんて、そんな……」
急に容姿を褒められて、照れながら髪を耳にかける。
目は切れ長で、顔も骨ばっているせいか、寿々はひとから怖いと言われることもしばしばだった。
「知ってます?篠原係長ってあの博映堂の創始者の孫らしいですよ?」
「え!?本当?」
博映堂とは業界最大手の広告代理店である。
その御曹司がこんな小さな会社にいるとは考えにくいけれど。