嘘つき義弟の不埒な純愛
(嘘でしょ……)
激しい後悔に襲われたのは数分後のこと。
寿々は呆然としながらバロック調の絢爛豪華な店構えのフレンチレストランを見上げていた。
まさか、どこをどう見ても一流のレストランに連れてこられるなんて。
「あ、の。こういったお店にはよく……?」
「ときどきな」
篠原は慣れた足取りで店の中に入って行った。
祝前日の金曜日とあって、店内は混雑していたが、支配人の計らいで奥の個室に通される。
それだけで、篠原がやんごとない身分だとわかった。
「何か飲むか?」
席に着きメニューを開いた篠原にすすめられるままに、ワインを注文する。
お酒で誤魔化さないと場違いの店の雰囲気に呑まれてしまいそうだった。
「うわあ!美味しい……!」
「よかった」
運ばれてきた料理とワインの感想を正直に述べれば、篠原は柔らかく目尻を下げて微笑んだ。
個室に通されたおかげで、むしろ人目を気にせずコース料理を堪能できたのかもしれない。