嘘つき義弟の不埒な純愛
「実は水無月に話があるんだ」
「なんでしょうか?」
デザートプレートに舌鼓を打っていた寿々に、篠原は改まった態度で告げた。
こんな立派なお店に連れてきてもらったわけだし、仕事の話だろうか。
「俺と結婚を前提に付き合って欲しい」
寿々は思わず目を瞬かせた。
(今、なんて……?)
寿々の心の声が聞こえたのか、篠原はもう一度同じ台詞を口にした。
「俺と結婚を前提に付き合って欲しい」
今度は聞き間違えようがなかった。
酔いが一気に醒め、頭の一部が冷静になっていく。
「嫌なら断ってくれて構わない。仕事に支障はきたさないつもりだ」
「な、んで……私を……?」
「水無月が好きだからに決まっている」
根回し一切なしの直球ストレートに寿々はたじろいだ。
「クールなようでペットボトルについているマケをちまちま集めているところとか。困ってる後輩を放っておけないお人好しなところとか。全部好きだ」
篠原は本当に寿々を細かいところまでよく見ている。
寿々の顔が燃えるように熱くなった。
たまらなくなって篠原から目を逸らす。