嘘つき義弟の不埒な純愛

「あらあ!そんなに朝早くから撮影してたの?」
「朝しか貸してもらえなくて、撮影が終わるまで毎朝四時起き」
「それは大変だったなあ」

 普通の人とかけ離れた生活を送る梓に、両親共に興味津々だ。
 寿々も二人に合わせて相槌を打っていたら、膝の上に置いていた左手に突如異変を感じた。

(ん?)

 さりげなく視線を下に落とし、何が起こっているのか確認する。なんと、梓の右手が寿々の左手をすっぽりと覆っていた。
 
(梓?)

 梓は寿々の手を握っているなんておくびにも出さず、涼しい顔で両親の話に応じていた。

「うん、そう。最近はクランクインに備えてジムに通ってる。父さんこそ少しは鍛えた方がいいよ。腹に肉がつき始めてる」
「そうか?うーん実は最近コレステロールの数値がなあ……」
「そうなの。油っぽい食事は控えてっていつも言ってるのに、完全に食べ過ぎなのよ」
「でもなあ……」

 おしゃべりに花が咲いているわけだが、寿々は今それどころじゃない。
 梓は手を握るだけでは飽き足らず、まるで恋人同士みたいに五指をそれぞれの隙間に絡ませる。
 小指で手の甲をすりすりと撫でられて、ぞわっと鳥肌がたった。
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