嘘つき義弟の不埒な純愛

 すべての始まりは二十年前。

 死別によりシングルファザーとなった父が新しい伴侶をつれてきた。
 相手の女性は、朗らかで逞しく、連れ子の梓にも優しく接してくれた。
 亡くなった母は病弱で、生きている間は何度も入退院を繰り返していた。
 子ども心に、父は次こそは穏やかに暮らすために、心身ともに頑丈そうな強い女性を選んだのだと思った。
 実の母親の記憶は朧げだったが、彼女はいつも泣いていた気がする。
 夫と子供を残し、失意の中で亡くなった母には、同情を禁じえない。

 父の再婚相手には梓同様、連れ子がいた。
 初対面は結婚二十周年を祝ったあのホテルのイタリアンレストラン。
 チュール素材のラベンダー色のワンピースを着ていた寿々は、切れ長の瞳でジイっと梓の様子を窺っていた。

『こ、こんにちは……』
 
 初対面はお互いよそよそしい態度だった。
 ひとりっ子だったのに、急に姉弟になれと言われても理解が追いつくはずがない。
 顔合わせから三ヶ月後、両親は再婚し、ふたりは晴れて義姉弟になった。
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