嘘つき義弟の不埒な純愛

『梓!』

 一緒に暮らしていく中で芽生え始めたのは、ありきたりな姉弟愛とは別の感情だった。
 年月が経つにつれ、劣情が膨らんでいった。

【どうせ人間はいつか死ぬ】
 
 実母の死により、齢六歳にして培われた人生観は、梓に多大な影響を与えた。
 梓にとって他人とは、いつかいなくなる存在だった。
 進級、進学、引っ越し。離別や死別を含めたらそれこそキリがない。
 なん人もの人間が梓の前を通りすぎていく中、寿々だけが特別だった。

『お姉ちゃんがずっとそばにいてあげるね!』
 
 寿々本人も忘れているであろう拙い約束は梓にとって希望の光だった。
 それはいつまでも消えずに、梓の胸の中に残り続けた。
 寿々だけは、いつまでもそばにいてくれると信じていた。
 ――ずっと信じていたかった。
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