嘘つき義弟の不埒な純愛

(来ないか)

 梓は昔に思いを馳せながら、自分の部屋から夜の街を見下ろしていた。
 梓は寿々の到着を今か今かと待ちわびていた。
 しかし、待ち始めてから二時間以上が経過しても、彼女が部屋にやってくる気配はない。
 
(当たり前だな)
 
 自分の感情が許されないものだと知りながら、寿々に選択肢を無理やり押し付けた。
 寿々にとっては身を切るように辛い二択だ。
 決断を迫ったのは、梓のエゴに他ならない。
 寿々の望みはなんとなく理解していた。
 彼女が欲しいのはあくまでも姉弟という普遍的な繋がりであって、梓自身ではないのだ。
 梓の天性の演技力を持ってすれば、寿々の望みは永遠に叶えられたのかもしれない。
 ふたりで永遠に同じ刻を歩んでいけるなら、体裁はどうでもよかったが……。

(他の男のところにやってたまるか)

 梓に心奪われておきながら、他の男と添い遂げるというなら話は変わってくる。

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