嘘つき義弟の不埒な純愛
「こんな時間まで寝てたの?」
「昨日、夜中まで撮影で……」
梓は欠伸をかみ殺しながら答えた。
たしかに髪には寝癖がついていたし、梓が着ているのはパジャマ代わりのスウェットの上下だ。
本当に今し方起きたばかりみたい。
ただし、ひとつだけ嘘が含まれている。
「正直に言いなさい」
寿々は圧をかけるために、あえて機嫌よくニコリと微笑んだ。
寿々は梓の表情を見ただけで彼が噓をついているのか、いないのかわかるのだ。
今を時めく人気俳優にして、数々の映画賞を総なめにしてきた経歴を持つ梓でも、寿々の前では演技が通じない。
それはふたりが過ごしてきた、日々の賜物だ。
梓は観念したのか、首の後ろを掻きながら白状した。
「……ゲームしてた」
「またやってたの?ほどほどにしとかないと、クマだらけになるよ?梓はすぐ顔に出るんだから」
寿々はむぎゅっと梓のスベスベの頬をつまんだ。梓は昔から顔がすぐにむくみ、クマができやすい体質なのだ。
「ファンの女性を失望させちゃダメでしょ?」
「気をつける」
寿々から叱られた梓は拗ね気味にサッと目を逸らした。
子供の時みたいにゲームは一日三時間までと、大人になっても口を酸っぱくして言わなければならないのも変な話だ。