嘘つき義弟の不埒な純愛

 篠原と話をつけた寿々は、その足で梓のマンションに向かった。
 いつも通りセキュリティを潜り抜け、インターフォンを押す。

「寿々」
「梓」

 玄関の扉が閉まるやいなや、梓に抱きつかれた。

「寿々、会いたかった」

 もう我慢の限界と言わんばかりの、甘ったるいキスが降ってくる。
 それどころか、梓は寿々の着ているシャツのボタンまで外そうとした。

「あ、待って……。こんな来てすぐいきなり……」
「もう待てない」

 キスをされながら服を脱がされる。
 シャワーも浴びずに、そのまま寝室に雪崩れ込む。
 梓から求められるがままに、二度三度身体を重ねたら、ようやくひとごこちつく。

「なあ、寿々。ここに住まない?俺、寿々に会えなくて、もう死にそうなんだけど」
 
 梓は早くも瀕死を訴えた。
 冬に始まるサスペンスドラマがクランクインしたばかりの梓は、ここのところ朝から晩まで撮影に忙殺されている。
 ふたりの時間が容赦なく削られ、不満がたまっているらしい。
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