嘘つき義弟の不埒な純愛

 寿々の母と梓の父が結婚したのは今から二十年前。寿々が八歳。梓が六歳のときだ。
 幼い頃の梓はそれはそれは可愛かった。
 声変わり前の明るく朗らか声色、透き通るような白い肌。
 隆々とした筋肉のついていないほっそりした身体つきは、あどけない少年のイメージそのものだった。
 十歳で芸能界にスカウトされたのは、偶然ではなく必然だった。
 芸能事務所に所属してから数週間、ある映画監督に気に入られ、早々と映画デビューが決定。
 数分しか出演シーンのない端役にも関わらず、その後オファーが殺到した。
 そして、人気コミックが原作の青春映画の主演に抜擢されたのをきっかけに、人気俳優の地位を確固たるものにした。

 弟の梓が華々しく活躍する一方で、姉の寿々はごくごく平凡な人生を送ってきた。
 中学、高校をまあまあの成績で卒業し、学校推薦で大学に入学。
 ほどほどの成績で卒業した後は、最初に内定をもらえた今の会社に就職した。
 我ながら特筆すべきところのない人生だ。

< 6 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop