嘘つき義弟の不埒な純愛
「ねえ。再来週の結婚二十周年のお祝いの日はスケジュールを空けてあるんだよね?」
「ああ、大丈夫。マネージャーにも確認した」
再来週の日曜は両親の二十回目の結婚記念日にあたる。
お祝いとして、四人が初めて顔合わせを行ったレストランでディナーをご馳走する計画だ。
久しぶりの家族団欒とあって、両親は今からとても楽しみにしている。
梓の予定を確認した寿々は、再び掃除に向き直り、荒れ果てた部屋の片付けを手早くこなしていく。
「すーずーちゃん」
「きゃっ!」
シンクの汚れをウエスで拭いていた寿々は梓に背後から抱きつかれ、思わず悲鳴を上げた。
背中に梓の逞しい胸板が押し付けられ、ドキンと心臓が跳ね上がる。
「なっ!なに!?」
「俺には寿々だけだよ」
耳元でささやかれたのは、世の女性がこぞって欲する甘いセリフ。寿々とて例外ではない。
ドキドキと高鳴る心臓を必死になって落ち着ける。
梓の発言を間に受けてはいけない。
「つまり、お腹が空いたから何か食べたいってこと?」
「あたり。さすが寿々」
梓はヒヒッと屈託なく笑った。
そこは、演技でも「そんなことないよ」と言ってくれればいいのに。