嘘つき義弟の不埒な純愛

「片づけが終わったら適当に作るから、座って待ってて」

 寿々はイタリア製だという本革の立派なソファを顎で指し、梓をシッシッと手で追い払った。

「はいはい」

 邪魔者扱いされた梓は、大人しくソファに戻っていった。
 姉の寿々には心を許し、甘えてわがままを言う梓だけれど、本当の彼は用心深い。
 一度ハウスキーパーを雇ったらどうかと尋ねてみたが、私物を盗まれたら困ると難色を示された。
 日本中に顔と名前知られている梓には、いつもこういった余計な心配事がつきまとう。
 結果として、寿々が定期的にハウスキーパー代わりとして梓のマンションに通うようになった。

(まあ、いいけどさ)

 片づけがひと段落した寿々はキッチンに立ち、スパゲッティを茹で始めた。美容を意識した糖質オフのロカボ仕様だ。
 茹で上がったら買い置きしてあるパスタソースと和えるだけ。
 あと簡単にサラダとスープもつけた。
 夕食が出来上がったらふたりで食卓を囲う。

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