輝く未来の国王は 愛する妃と子ども達を命に代えても守り抜く【コルティア国物語Vol.2】
「やっぱり国王陛下のお兄さんの話はタブーのようね」

部屋に戻り、寝衣に着替えると、ナイトガウンを羽織りながらクリスティーナはフィルに話しかけた。

「晩餐会にもいらっしゃらなかったし…。国王陛下も、長らく男児一人の時代が続いたのかって話を、気まずそうにしながらも否定されなかったしね」
「そうだな。やはりアンドレアの言った通り、この国には何かがある」

二人はソファに並んで座り、真剣に考えを巡らせる。

「ねえ、フィル。こんな状況で、本当に明日友好条約を結んでもいいの?」
「んー、確かに。けど今回の滞在は短いし、友好条約の内容も、既に国王同士で取り交わされている。俺はそれを確認して署名する役目でしかないからな」
「でももしこの国に何かがあるとしたら、友好条約を結ぶ前に知っておきたいわよね。事情によっては、そこで一旦ストップをかけることだってできる訳だし」
「それはそうだけど…。肝心の事情を探る時間はないぞ?なにせ明日条約を結んだら、明後日の午前中にはここを発つ弾丸スケジュールだからな。それとも滞在を少し伸ばす?」

その提案に、クリスティーナは即座に首を振る。

子ども達と離れる時間を最小限にしたくてスケジュールを組んだし、今も、少しでも早く帰りたかった。

「それなら、やっぱり明日の条約締結は避けられない。国王の意向でもあるしな」
「そうよね…」

仕方なく納得したクリスティーナだったが、頭の中では別のことを考え始める。

(明日の午前中、フィルはスナイデル国王陛下と条約の内容を確かめる為の密談をする。その時に私が…)

急に目つきを変えてニヤリと不敵な笑みを浮かべるクリスティーナに、フィルは嫌な予感がした。

「ちょっと、クリスティーナ?何か企んでるだろ」
「あら?企むなんて、そんなことはないわ。明日フィルがいない午前中に、お城のガーデンを案内してもらおうと思ってるの。楽しみだわー、綺麗なお花。うふふっ!」

絶対にそんなこと思ってるもんか!と、フィルは心の中で叫びながら眉をひそめる。

「さあ、フィル。明日に備えてそろそろ寝ましょ。おやすみなさい」

そう言うと珍しくクリスティーナの方からチュッとキスをしてきた。

不覚にもそれだけで、フィルの心はメロメロになる。

いそいそとクリスティーナの隣に横たわり、腕枕をして抱き寄せると、「おやすみ、俺のティーナ」とささやいて甘く口づける。

さっきまでの真剣な考え事はどこへやら、フィルはクリスティーナの寝顔にニヤニヤしながら、いつまでも優しく髪をなでていた。
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