輝く未来の国王は 愛する妃と子ども達を命に代えても守り抜く【コルティア国物語Vol.2】
第六章 敵の正体
長い廊下を歩き、小さな扉の先にある石畳の螺旋状の階段を上がると、殺風景な部屋に押し込まれた。
(ここは、今朝外から見えた塔?)
クリスティーナは、冷たい石の壁が広がる部屋を見渡して考える。
ベッドと小さな机と椅子があるだけの、生活感のない部屋。
しばらくはここに幽閉されるのだろう。
「ケイティ、しっかり手枷をつけて見張っておけ」
執事はそう言い残し、部屋を出ていった。
ケイティと二人で残されたクリスティーナは、どうしたものかとケイティを見る。
執事に手渡された手枷を握り、じっとうつむいたままのケイティに、クリスティーナは近づいた。
黙って両手を差し出すと、ケイティは驚いたようにビクッと身体をこわばらせる。
「手枷、つけないと叱られるわよ」
クリスティーナがそう言うと、ケイティは震える手でクリスティーナに手枷をつけた。
「申し訳ありません…」
絞り出すような声で謝るケイティに、クリスティーナはため息をつく。
「ケイティ。私、あなたのこといい子だなって思ってたわ。だからこんなことをされて、とても悲しい」
ケイティは、カタカタと身体を震わせながらうつむいている。
「でもやっぱり、あなたが理由もなくこんなことをする子だとは思えないの。なぜこんなことをしたの?って本当は責めたいけれど、やめておくわ。ただ一つ、お願いがあるの」
え…、とケイティは視線を上げる。
「明日、フィルが無事かどうか確かめてきて。ただそれだけ。お願いね」
そう言うとクリスティーナは、窓の近くにある椅子に座った。
(それにしてもケイティったら。こんなにゆるゆるにつけたら、簡単に手首が抜けちゃいそう。手枷っていうのはね、ただはめるだけじゃなくて、グッと輪っかを縮めなきゃ…)
心の中でブツブツひとりごちていると、ケイティが涙声で、申し訳ありません!と大きく頭を下げた。
「わたくしの父は病気がちで、母が五人の子どもを育てながら働いています。貧しいわたくしの家族を助ける代わりに、あの方にここで働くように言われたのです。逆らえば、家族は見捨てられます。それでわたくし、か弱い王太子妃殿下にこんな恐ろしいことを…。本当に申し訳ありません。こんなことをわたくしが申し上げるなとお怒りかと存じますが、どうかお気を確かに…」
なるほどね、とクリスティーナは頷いた。
それなら悪いのはやはりあの執事だ。
「ケイティ、もういいわ。あなたこそ気をしっかり持つのよ」
「まあ、お妃様。ご自身こそお辛いのに、わたくしのことなど…。お優しいクリスティーナ様、ありがとうございます」
ケイティは涙を拭って頭を下げる。
「大丈夫よ、私そんなに…」
か弱くないわよ、と続けようとして、ふと思いついた。
(そうか、私がじゃじゃ馬だってこと、この国の人は知らないんだわ。それなら、か弱いと思わせておいた方がいいわね)
クリスティーナは急にシュンとしおらしくうつむき、悲しげな雰囲気で涙をこらえるフリをした。
(ここは、今朝外から見えた塔?)
クリスティーナは、冷たい石の壁が広がる部屋を見渡して考える。
ベッドと小さな机と椅子があるだけの、生活感のない部屋。
しばらくはここに幽閉されるのだろう。
「ケイティ、しっかり手枷をつけて見張っておけ」
執事はそう言い残し、部屋を出ていった。
ケイティと二人で残されたクリスティーナは、どうしたものかとケイティを見る。
執事に手渡された手枷を握り、じっとうつむいたままのケイティに、クリスティーナは近づいた。
黙って両手を差し出すと、ケイティは驚いたようにビクッと身体をこわばらせる。
「手枷、つけないと叱られるわよ」
クリスティーナがそう言うと、ケイティは震える手でクリスティーナに手枷をつけた。
「申し訳ありません…」
絞り出すような声で謝るケイティに、クリスティーナはため息をつく。
「ケイティ。私、あなたのこといい子だなって思ってたわ。だからこんなことをされて、とても悲しい」
ケイティは、カタカタと身体を震わせながらうつむいている。
「でもやっぱり、あなたが理由もなくこんなことをする子だとは思えないの。なぜこんなことをしたの?って本当は責めたいけれど、やめておくわ。ただ一つ、お願いがあるの」
え…、とケイティは視線を上げる。
「明日、フィルが無事かどうか確かめてきて。ただそれだけ。お願いね」
そう言うとクリスティーナは、窓の近くにある椅子に座った。
(それにしてもケイティったら。こんなにゆるゆるにつけたら、簡単に手首が抜けちゃいそう。手枷っていうのはね、ただはめるだけじゃなくて、グッと輪っかを縮めなきゃ…)
心の中でブツブツひとりごちていると、ケイティが涙声で、申し訳ありません!と大きく頭を下げた。
「わたくしの父は病気がちで、母が五人の子どもを育てながら働いています。貧しいわたくしの家族を助ける代わりに、あの方にここで働くように言われたのです。逆らえば、家族は見捨てられます。それでわたくし、か弱い王太子妃殿下にこんな恐ろしいことを…。本当に申し訳ありません。こんなことをわたくしが申し上げるなとお怒りかと存じますが、どうかお気を確かに…」
なるほどね、とクリスティーナは頷いた。
それなら悪いのはやはりあの執事だ。
「ケイティ、もういいわ。あなたこそ気をしっかり持つのよ」
「まあ、お妃様。ご自身こそお辛いのに、わたくしのことなど…。お優しいクリスティーナ様、ありがとうございます」
ケイティは涙を拭って頭を下げる。
「大丈夫よ、私そんなに…」
か弱くないわよ、と続けようとして、ふと思いついた。
(そうか、私がじゃじゃ馬だってこと、この国の人は知らないんだわ。それなら、か弱いと思わせておいた方がいいわね)
クリスティーナは急にシュンとしおらしくうつむき、悲しげな雰囲気で涙をこらえるフリをした。