輝く未来の国王は 愛する妃と子ども達を命に代えても守り抜く【コルティア国物語Vol.2】
「全員動くな」

グラハム2世の背後から首筋に刃を当てて、フィルが鋭い声を上げる。

「動くとボスの命はないぞ」

ピタリと兵達が動きを止めた。

「武器を捨てて手を上げろ」

一人、また一人と、兵は剣を床にポトリと落としてゆっくりと手を上げる。

全員が降参したのを確認した時、すぐ目の前で不気味な声がした。

「クッ、私を見くびるなよ」

そう呟いたグラハム2世がスッと振り返り、マントの下からキラリと光る剣を抜いた。

だが、構え方からして剣の腕前はさほどではないと分かる。

フィルが軽く剣を振り払おうとした時だった。

グラハム2世は、剣を持っていない方の手でマントの中から何かを取り出すと、フィルに向かって投げた。

ピシャッと音がして、フィルの腕に液体がかかる。

なんだ?と思った次の瞬間、焼け付くような痛みが走った。

(化学薬品?!)

熱傷の痛みに顔を歪めると、クリスティーナが、フィル!と叫ぶ。

「来るな!クリス」

クリスティーナにまで薬品をかけられてはいけない。

フィルは痛みに耐えながら、グラハム2世のマントを剣で切り裂き、みぞおちを剣の柄で打った。

膝から崩れ落ちたグラハム2世を床に組み敷くと、クリスティーナが手早くロープで縛る。

それを見届けたフィルは、ウッとうめいて両膝を床についた。

「フィル!」

クリスティーナは悲痛な叫び声を上げて、フィルを抱き留める。

「早く手当を!」

誰にともなく助けを求め、クリスティーナは涙をこらえてフィルを抱きしめていた。
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