輝く未来の国王は 愛する妃と子ども達を命に代えても守り抜く【コルティア国物語Vol.2】
第十一章 太陽の王
「これを。火傷によく効く薬草じゃ」

ベッドに寝かされたフィルは何度も流水で手を洗われたあと、神の遣いとされる『シャーマン』と呼ばれるおばあさんの手当を受けていた。

薬草を塗り、その上から包帯で巻くと、シャーマンはクリスティーナを振り返る。

「しばらくすれば痛みはなくなる。傷もほとんど残らんじゃろう」
「ありがとうございます、シャーマン様」

クリスティーナはホッとしながら、目を潤ませて頭を下げた。

「それにしても、この剣を抜いたというのは(まこと)か?」

え?と、クリスティーナは首を傾げて、フィルの横に置いてある剣に目を転じる。

「あ、はい。この剣が壁に掛けてあったのをお借りしました」
「なんと!では、この剣で戦ったというのか?」
「ええ、そうですが…」

なぜそんなに驚かれるのだろう。
ひょっとして、勝手に触ってはいけないほど大事な剣だったのだろうか?

「あの、申し訳ありませんでした。手元に武器がなかったものですから…」

クリスティーナが深々と頭を下げると、シャーマンは首を振った。

「謝ることはない。この剣はこの王子の物なのだから」
「え?それはどういう…」

ますますクリスティーナは首をひねる。

「この剣はその昔、私の祖先がまじないをかけて作った剣なのじゃ。これを鞘から引き抜けるのは、太陽の王となる者だけだと」
「太陽の王…でございますか?」
「そうじゃ。天からの祝福を受けて生まれ、人々を幸せへと導く、光輝く王。その王の為にこの『太陽の(つるぎ)』は作られた。何百年も経つが、今まで誰一人としてこの剣を抜くことはできなかった。私はいつかこの目で、太陽の王がこの剣を抜くところを見たいと願っていたんじゃよ。それがまさか、この国の王ではなく、他国の王子だとは思いもよらなかったがの」
「それが、フィル…」

クリスティーナはシャーマンの言葉を噛みしめながら、ベッドで眠っているフィルを見つめた。
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