輝く未来の国王は 愛する妃と子ども達を命に代えても守り抜く【コルティア国物語Vol.2】
第二章 涙の別れ
「クッキーをどうぞ」

フローリアが小さな手で包みを差し出すと、誰もがにっこりと笑顔で受け取る。

「まあ、ありがとうございます。フローリア様」
「ありがとう、プリンセス・フローリア」

お礼を言う母親と、小さな女の子。

そのあとも次々と、列を作って待っている皆に、フローリアとアレックスはにこやかにクッキーの包みを手渡していた。

春のうららかな陽気が心地良い5月。

王宮の広い庭園では、一般開放の日に合わせてたくさんの家族連れが遊びに来ていた。

「クリスティーナ様、ごきげんよう。この子、マックス王子と同じ日に生まれたんです」
「そうなのですね。ではマックスの良いお友達になってくれたら嬉しいわ」
「まあ!もったいないお言葉、ありがとうございます」

マックスを抱いたクリスティーナのもとにも、母親達がにこやかに話しかけにくる。
アレックスもフローリアも、それぞれ年が近い子と仲良く駆け回って遊んでいた。

クリスティーナが提案して始まったこの王宮の庭園開放は、今ではすっかりお馴染みのイベントとして国民の楽しみになっている。
我が子には身分の差など気にせず友達をたくさん作って欲しいと、クリスティーナもフィルも常々願っていた。

「よーし、では次は誰かな?」

クリスティーナ達母親同士が、ガーデンテーブルで紅茶を飲みながらおしゃべりをする傍ら、フィルやアンドレア、そしてオーウェン達近衛隊の隊員が、おもちゃの剣を片手に子ども達とチャンバラを楽しんでいる。

「おっ、君、なかなか上手いぞ。将来近衛隊に入らないか?」

フィルは半分本気交じりに、男の子と戦いながら近衛隊に勧誘していた。

「おおー!フローリア様、中々のお手前。血は争えませんな」

年上の男の子相手に果敢に攻めていくフローリアを、オーウェンは感心したように眺める。

「うわ、ちょっと、アレックス!参った、参ったってば」

アンドレアは相変わらず剣術が苦手で、まだ5才のアレックスにも押され気味だった。

「アンドレア様、しっかり!」

リリアンが笑顔で声をかける。
その様子に、クリスティーナはロザリーと顔を見合わせて笑う。

誰もが幸せな笑みを浮かべる平和な午後のひととき。
だがコルティア国には、まだまだ試練の時が待ち構えていたのだった。
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