その男、溺愛にて
車から降りて、今夜の仕事場である高級ラウンジに急ぐ。
今夜はその店を貸し切って、ある政治家の誕生日会が開かれる。全くもって良い身分だ。国民の税金を湯水のように女に注ぐ狸親父…。
警護に着くのはこれで3回目。
表面上はにこやかな雰囲気だが、メガネの向こうの目は笑っていない。腹黒で、女漁りが激しい変態だ。
そういう奴は恨みをかう事が多いから、今日のように脅迫状をもらう事が多々ある。誕生日会くらい中止にして大人しくしていればいいのに、暴力には屈しないと言うスタンスを崩さないから、SPが出動する事態になる。
ハァーと一息深く吐いて、俺は部下の待つ会場へと急ぐ。
「こちら、班長松永だ。今到着した。特に問題はないか?」
インカムを使って、今、任務についている部下に話しかける。
『こちら、A地点三好。特に変わった事はありません。』
『こちら、B地点小倉…。」
今夜は計4人で警護に当たる。
何事も起きない事を願い、客を装い席に潜む。
辺りを注意深く観察すれば、斜め1時の方向にいる黒縁眼鏡の男…ホステスと酒を飲んではいるが、狸親父を見る目が怪しい。
俺は普通を装い眼鏡をかける。この眼鏡にはカメラが仕込まれていて瞬き一回で写真が撮れる。瞬き2回で動画、そして警察内のデータファイルに繋がっているから、撮った写真から犯罪歴や基本データを瞬時に呼び出し、レンズのモニターに映し出す便利なアイテムだ。
『マル対らしき男を発見。直ちに情報チェックしろ。』インカムで班内に認識させる。
ビンゴ…犯罪歴あり。組みに所属のチンピラだ。
普通のサラリーマン風を装っていて一見分からないが、目つきがギラついている。
『組織的犯罪かもしれない。周辺に注意。』
『了解』
部下達と情報を把握し、他の来場客に目を光らせる。
「こんばんはー。お兄さんイケメン!お一人ですか?ご一緒しても?」
ここのホステスだろうか、不意に話しかけられて曖昧に返事をする。
今回は侵入捜査の為、あまり目立たず対象を警護しなければいけない。そういう時は普段から悪目立ちするこの顔を隠す為、眼鏡をかけるのだが…。
「ねぇ。お兄さん、ハーフなの?カッコいい。何か飲まれます?今夜は主催者の奢りだから、なんだって飲み放題よ。」
そう言って、俺に接待してくるホステスを横目にマル対を目で追う。
任務中だと知らないホステスは、余り気乗りしない俺にやたらと絡みついて来る。
「ねぇ、お兄さん。楽しくお喋りしましょうよ。」
腕に抱きつかれて、胸を押し付けて来るから虫唾が走る。
この手の女は苦手だ。
香水をプンプンさせて色気で男を誘って来る。母親がこのタイプだったせいで、俺はろくな幼少期を送れなかった。
「すいません。今、任務中ですので…。」
胸ポケットに潜ませてある警視手帳をチラリと見せ、これ以上の妨害を止める。
「えっ!ウソ!!カッコいい…本物初めて見た。」
女は場をわきまえるどころか、逆に俺に興味を持って来るからタチが悪い。
「すいません。」
それでも律儀に挨拶して俺はその場を離れる。
今夜はその店を貸し切って、ある政治家の誕生日会が開かれる。全くもって良い身分だ。国民の税金を湯水のように女に注ぐ狸親父…。
警護に着くのはこれで3回目。
表面上はにこやかな雰囲気だが、メガネの向こうの目は笑っていない。腹黒で、女漁りが激しい変態だ。
そういう奴は恨みをかう事が多いから、今日のように脅迫状をもらう事が多々ある。誕生日会くらい中止にして大人しくしていればいいのに、暴力には屈しないと言うスタンスを崩さないから、SPが出動する事態になる。
ハァーと一息深く吐いて、俺は部下の待つ会場へと急ぐ。
「こちら、班長松永だ。今到着した。特に問題はないか?」
インカムを使って、今、任務についている部下に話しかける。
『こちら、A地点三好。特に変わった事はありません。』
『こちら、B地点小倉…。」
今夜は計4人で警護に当たる。
何事も起きない事を願い、客を装い席に潜む。
辺りを注意深く観察すれば、斜め1時の方向にいる黒縁眼鏡の男…ホステスと酒を飲んではいるが、狸親父を見る目が怪しい。
俺は普通を装い眼鏡をかける。この眼鏡にはカメラが仕込まれていて瞬き一回で写真が撮れる。瞬き2回で動画、そして警察内のデータファイルに繋がっているから、撮った写真から犯罪歴や基本データを瞬時に呼び出し、レンズのモニターに映し出す便利なアイテムだ。
『マル対らしき男を発見。直ちに情報チェックしろ。』インカムで班内に認識させる。
ビンゴ…犯罪歴あり。組みに所属のチンピラだ。
普通のサラリーマン風を装っていて一見分からないが、目つきがギラついている。
『組織的犯罪かもしれない。周辺に注意。』
『了解』
部下達と情報を把握し、他の来場客に目を光らせる。
「こんばんはー。お兄さんイケメン!お一人ですか?ご一緒しても?」
ここのホステスだろうか、不意に話しかけられて曖昧に返事をする。
今回は侵入捜査の為、あまり目立たず対象を警護しなければいけない。そういう時は普段から悪目立ちするこの顔を隠す為、眼鏡をかけるのだが…。
「ねぇ。お兄さん、ハーフなの?カッコいい。何か飲まれます?今夜は主催者の奢りだから、なんだって飲み放題よ。」
そう言って、俺に接待してくるホステスを横目にマル対を目で追う。
任務中だと知らないホステスは、余り気乗りしない俺にやたらと絡みついて来る。
「ねぇ、お兄さん。楽しくお喋りしましょうよ。」
腕に抱きつかれて、胸を押し付けて来るから虫唾が走る。
この手の女は苦手だ。
香水をプンプンさせて色気で男を誘って来る。母親がこのタイプだったせいで、俺はろくな幼少期を送れなかった。
「すいません。今、任務中ですので…。」
胸ポケットに潜ませてある警視手帳をチラリと見せ、これ以上の妨害を止める。
「えっ!ウソ!!カッコいい…本物初めて見た。」
女は場をわきまえるどころか、逆に俺に興味を持って来るからタチが悪い。
「すいません。」
それでも律儀に挨拶して俺はその場を離れる。