その男、溺愛にて

溢れ出す思い

紗奈の家の駐車場に到着して、昔に戻ったみたいに楽しいな。と、俺が昔を懐かしんでいたら、
「松永さんって…何で結婚しないんですか?」

と、突然核心をついた事を聞かれる。
「別に…そう思うような人がいない、からじゃないか…?」

曖昧な返事をしてしまう。
俺だって三十路の男だ、誰かと付き合った事が無いなんて言わないが…。いつだって本気にはなれず、結局はこの小娘以上好きになる奴はいなかっただけだ。

そう思うのに言葉には出来ず、ただ、紗奈を見る。
「何て曖昧な言葉…松永さんってきっと、1人や2人いるんですね彼女が。」

「そんな不誠実な男だと?好きな奴なんて、生まれてこの方1人しかいない。」
と、口走ってしまう。

「1人…いるんですね…。」
ヤバい、つい、感情的になって自ら追い込まれた状況になってしまった。これじゃ自白に追い込まれるパターンだ。
普段、容疑者を追い込んでいるこの俺が、紗奈のような小娘に追い込まれとは…さすが宮西班長の娘。

「お前…いつその自白誘導スキルを手に入れた?西宮班長に教わったのか?」

「…何ですかそれ?」
当の紗奈はポカンとしている。
凄いな…知らぬ間に身に付いたのか?危なく罠に引っかかるところだった。

「まぁ、いい。それより夕飯どうする?腹減っただろ?」

「作ってありますよ。…簡単なカレーですけど。」
本当…出来た女だ。罠にかかる男なんてイチコロだな。俺含め…。

夕飯のカレーを一緒に食べながら、机の上には他にも俺の好きな物オンパレードで、知らないうちに大人になった紗奈はいろいろなスキルを手に入れて、無意識に俺を翻弄して来た。

「松永さんにはこれまで冷たくしてしまった、罪滅ぼしをさせて頂きたいと思います。」
そう可愛く言ってくるからまた、俺はある意味、既に罠にかかってるんじゃないかと目を見張る。
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