その男、溺愛にて
「紗奈…どうして泣いてる?」
紗奈の横に並んで立ってそっと背中を撫ぜる。
「ちょっと…石鹸が目に入っちゃって、大丈夫です。気にしないでください。」
紗奈は慌ててそう言うが、そんな優しい嘘を間に受けるほど馬鹿じゃない…。
「俺が近くに居ると、西宮班長を思い出させてしまうか?…本当は紗奈の為には来ない方がいいんじゃないかって、葛藤していた。」
紗奈の様子を伺いながら、ゆっくりと話しかける。
「…恨みや怒りや憎しみは時に人を強くする事を俺は知っている。自分自身がそうだったから。
紗奈が俺を恨む事で強く生きていけるんだったら、それで良かったんだ。
なのに…お前を誰かに獲られそうになって怖くなったんだ。何よりも誰よりも紗奈が1番大事だから。
俺が側にいる事で泣かせてしまうんだったら…もう2度と会わない方が良いのかもしれない。」
俺はそれだけを伝えて玄関へと足を運ぶ。
足取りは重い。心がギシギシと痛んで苦しくて、死にそうだ。
「待って…待って下さい。」
突然、後ろから抱き止められて頭が真っ白になる。
「なんでいつも、そう決め付けて、いなくなっちゃうんですか?」
紗奈が泣きながら俺に訴えてくる。その温もりを感じながら、振り解く事なんて出来なくて、立ち止まったまま動き出せない。
「私は…父の事を思い出して涙が出た訳じゃないんです。松永さんが、これからも、こうやって父の代わりに傷付いて、生きて行くんじゃないかって…思って…。
松永さんが…好きです…大好きなんです。これ以上傷付いて欲しく無い…。」
はっ⁉︎思考が止まって頭が上手く働かない…。
好きだって?…俺を!?
ドクドクと脈打つ自分の心臓の音だけが聞こえてくる。
抱きついている紗奈の手をそっと外して振り返る。涙で濡れたその瞳を見るとズキンと心が痛む。
「俺は…紗奈にとって、兄のような存在なんだと思っていたから…。言葉にするべきでは無いと…ずっと気持ちを抑えてたんだ。」
「私だって…松永さんから見たらずっと子供なんだって…思ってたから…。」
紗奈の横に並んで立ってそっと背中を撫ぜる。
「ちょっと…石鹸が目に入っちゃって、大丈夫です。気にしないでください。」
紗奈は慌ててそう言うが、そんな優しい嘘を間に受けるほど馬鹿じゃない…。
「俺が近くに居ると、西宮班長を思い出させてしまうか?…本当は紗奈の為には来ない方がいいんじゃないかって、葛藤していた。」
紗奈の様子を伺いながら、ゆっくりと話しかける。
「…恨みや怒りや憎しみは時に人を強くする事を俺は知っている。自分自身がそうだったから。
紗奈が俺を恨む事で強く生きていけるんだったら、それで良かったんだ。
なのに…お前を誰かに獲られそうになって怖くなったんだ。何よりも誰よりも紗奈が1番大事だから。
俺が側にいる事で泣かせてしまうんだったら…もう2度と会わない方が良いのかもしれない。」
俺はそれだけを伝えて玄関へと足を運ぶ。
足取りは重い。心がギシギシと痛んで苦しくて、死にそうだ。
「待って…待って下さい。」
突然、後ろから抱き止められて頭が真っ白になる。
「なんでいつも、そう決め付けて、いなくなっちゃうんですか?」
紗奈が泣きながら俺に訴えてくる。その温もりを感じながら、振り解く事なんて出来なくて、立ち止まったまま動き出せない。
「私は…父の事を思い出して涙が出た訳じゃないんです。松永さんが、これからも、こうやって父の代わりに傷付いて、生きて行くんじゃないかって…思って…。
松永さんが…好きです…大好きなんです。これ以上傷付いて欲しく無い…。」
はっ⁉︎思考が止まって頭が上手く働かない…。
好きだって?…俺を!?
ドクドクと脈打つ自分の心臓の音だけが聞こえてくる。
抱きついている紗奈の手をそっと外して振り返る。涙で濡れたその瞳を見るとズキンと心が痛む。
「俺は…紗奈にとって、兄のような存在なんだと思っていたから…。言葉にするべきでは無いと…ずっと気持ちを抑えてたんだ。」
「私だって…松永さんから見たらずっと子供なんだって…思ってたから…。」