イケメン外国人と親交を深めたつもりが、イケメン異星人と恋人契約交わしてました!
❖グレイな隣人

異種接近遭遇 PART.1



疲れた。もういいや。何も考えたくない。

アパートの外灯が付いたり消えたりしているのも、どうでもいい。ただ、寒い。

ごそごそとバッグのなかの家鍵をあさってると、背後に人の気配がした。

「コンバンわ」

振り向けば、黄褐色の肌をした彫りの深い顔立ちの若い男。
職業柄、すぐに愛想笑いが浮かんだ。

「今晩は。寒いですね」

意味のない形だけの挨拶(あいさつ)だけど、相手は律儀に会話をつないでくる。

「寒いデスね。日本(ココ)はいつもこんな寒いデスか?」
「あー、年々変わってきてますかね。じゃあ……」
「良カッタら、ドウゾ」

片言で差し出された、缶に入ったコーン入りのポタージュスープ。……んん?

「えーと」
「あったまりマスよ」

にっこり微笑まれても、正直困る。困るが。

「ありがとう、ございます」

手袋越しに受け取った缶は、それほど熱くない。これ、飲んだらヌルいやつじゃん。

───隣人。挨拶交わすだけ。接点なし。

とはいえ、いらんこと言って波風立てるのは、性に合わない。

「イィえー。お休みナサイ」

良い事をした、という達成感丸出しの満面の笑み。
片手を上げて、自分の部屋(いえ)に入って行くイケメン異国人。

……うん。とりあえず、害はない。
害はないけど……メンドいな、近所付き合い。
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