素直になって甘えてほしい〜強がる彼女の事情〜

引越しの日の朝、お兄ちゃんから新しいマンションの鍵を預かり、仕事に行くお兄ちゃんを見送った。


「じゃあ、後でな」

「うん、行ってらっしゃい」

お兄ちゃんが出ると未央は仮眠を取り、起きたのはお昼すぎ、お兄ちゃんがおにぎりをテーブルに置いてくれている。

「いただきまーす」

お兄ちゃんは昨日上京してきたけどしばらくは地元と東京を行き来するらしい。

不動産会社の跡取りは若くても大変だねぇと呑気な事は言ってられない、スーツケースにポイポイと使いかけの歯磨き粉や、化粧水、着るものを詰めてタオルを1枚使って軽く汚れを拭いていく。

一応早く出たかったマンションだが2年間お世話にはなったので掃除をした。

マンションは月末に立ち会いを決めているので冷蔵庫はお兄ちゃんが時間のある時に中身を運ぶと言っていたし、他の家具の処分もお兄ちゃんに頼んだ。

結局自分で出来るなんて強がりを言っていた私もお兄ちゃんにお願いしてばかりだ。
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