大好きだから私はあなたを忘れた
「一組の、佐倉莉子って人」

蓮馬が、真剣な顔で言った。

「……その人が、西原悠馬の彼女なの?」

「俺はそう聞いてる。……どっちから告白したんだ?悠馬と佐野さん」

佐野さんというのは瑠奈のこと。

「西原悠馬」

その名前を聞いたら、蓮馬の顔がより険しくなった。

「別れたんじゃないの?瑠奈に告白する前に」

二股というべきか、浮気というべきかわからないけど、瑠奈がそんな目にあうなんて信じられなかった。

だから、さっき言ったことが事実であってほしい。

だけど、その思いは蓮馬の言葉によって閉ざされた。

「いや、今日も一緒に喋っているところを見かけたから……」

そんな、まさか。

「……」

「……」

長い沈黙。

いや、それほど長くはないのかもしれないけど、私にはとてつもなく長く感じた。

「電車来るぞ。とりあえず乗ろう」

沈黙を破ったのは蓮馬の言葉。

今まで立ち止まって話していたことを忘れていた。

「うん」

電車に乗り遅れないように、私たちは走った。


電車の中では、誰にでも話が筒抜け。

だからさすがに話すことはできなかったけど、お互いに同じようなことを考えていることは感じた。

『瑠奈になんて言おう』
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