大好きだから私はあなたを忘れた
「……どうしたの?」

私がそう問いかけても、一つも動かないし喋らない。

家に帰るのが嫌なのかな、と思った。

さっきの子、苦手だから会いたくない、とか。


「あのさ、」

私が反応に困っていると、急に蓮馬が口を開いた。

「うん」

蓮馬は、いつになく真剣な顔つきで私のことを見ていた。

そして、耳をすまさないと聞こえないような小さな声で言った。

「俺……玲衣が好き」

……好き、だって。

好き、って、言った……?

「ええ!?」

「ん、んじゃ、そういうことだからっ!」

そう言って蓮馬は家の方向に走っていった。

「え……待ってよ!」

そう叫んでも、止まっても振り向いてもくれない。

追いかけようと思ったけど、蓮馬の弟が近くにいたから、追いかけれなかった。


私はしばらく、その場に立っていた。

蓮馬が見えなくなるまで。

蓮馬の家は、今入っていった道を左に曲がったところにある。

だから、今立っているところは、蓮馬の家からギリギリ見えないところ。


そういえば、蓮馬の顔も耳も真っ赤だったな。

あんな蓮馬は見たことがない。

……というか、両思いってことでいいよね。

私も好き、って言えたらよかったんだけど。

私がそう言おうとする前に逃げ出すんだから、蓮馬らしい。

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