大好きだから私はあなたを忘れた

日比野蓮馬Side

つくづく思う。

俺ってどれだけ情けないんだろう。

玲衣のことは、ずっと好きだった。

いつからはわからないから、会った時からかもしれない。

ずっと好きで、今日告白だってしたのに。

まさか逃げるなんて。

俺が、告白直後にダッシュで逃げたことは、反射的にだった。

反射的に、逃げたいという衝動に陥った。

たぶん、というか絶対、俺は振られる。

こんな情けないやつを彼氏にしても、顔に泥を塗るだけだ。

こんなやつと喋っていてもつまらないだろう。

俺は告白なんて今まで一回もしたことがない。

ずっと玲衣が好きだったのもあるだろうけど、勇気が出ないのだ。

何をするにしても。

だからこんな情けないんだろうな、と心のなかでいう。



完全に沈んだ気分で玄関を開けると、さっき遊んでいた弟の友達がいた。

今日もいるのかよ、と静かに悪態をつく。

「あれ、陸斗の兄ちゃん落ち込んでる。ぷぷっ」

こいつ殴ってもいいか?

一瞬そんな考えがよぎったけど、さすがにそれはしないでおく。

「別に」

「わかった。好きなやつに振られたんだろ。やーいやーい、振られてやんの」

こいつは毎回、ピンポイントで俺を苛立たせてくれる。

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