大好きだから私はあなたを忘れた
俺はその声を無視して、二階にある自分の部屋へとあがっていく。

だから嫌いだ、あいつ。

変なことを言ったらうるさいだけだと、もう分かっているのでおとなしく部屋で課題をする。

かばんから出したのは理科のプリント。

あと少しで夏休みに入る。

早めに配られた夏休みの課題のレポート。

どうせまたどっさり課題が出るから、今のうちにやっておかないとあとから痛い目にあう。


それから五分経った。

俺の集中力は完全に消え失せて、握っていたシャーペンをかちかちと出して、中にひゅーっとしまう。

その動作を何回繰り返したことだろう。

いつの間にか二十分は過ぎていて、弟の陸斗とその友達の声はしなくなっていた。

もう帰ったんだろう。

まだこんなに早い時間なのに、とすぐそこにあった、四時半を指している時計を見る。

用事でもあったんだろうか。

早く帰ってくれるに越したことはない。


「蓮馬!」

一階から母親の声が聞こえてくる。

もう帰ってきたんだ。

いつもは五時を過ぎないと帰ってこないのに。

「なに」

なにか手伝ってとか言われるんだろうか。

めんどくさいなと思いつつも、あとからなにか言われることが目に見えて階段をゆっくり降りる。

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