大好きだから私はあなたを忘れた

日比野蓮馬side

俺は今、玲衣のいる病院に向かっている。
 
昨日の朝、玲衣の母から連絡があったらしい。

玲衣のいる病室に入ることが許されたと。

今日は行ける日だったから、一人で電車に乗って来ている。

「次は○○駅、 ○○駅」

アナウンスが聞こえた。

あと一つ先の駅だ。

期待に胸が高鳴る。

やっと、玲衣に会える。

早く会って謝りたい。

俺のせいで玲衣が事故にあったこと。

謝ってどうにかなることでもないけど、その代わりに、俺にできることならなんでもするから。


緊張と、やっと玲衣に会えるという嬉しさが同時に込み上がってくる。

病院にすいこまれるように、おぼつかない足取りで中に入って行った。


自動ドアが開いて、足を一歩、踏み出したとき。

「あ、蓮馬くん……?」

突然、名前を呼ばれて、声のした方向を向くと、そこには玲衣の母親、優里さんがいた。

「優里さん……」

俺の勘違いかもしれないが、優里さんは心なしか、暗い表情をしていた。

……玲衣になにかあったのかもしれない。

そんな考えが脳裏に浮かんだ。

打ち消そうとしても、簡単には消えない。

「玲衣……一部の記憶喪失だって。……私のことも覚えていないみたい」

優里さんが、泣きそうな声で言った。
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