大好きだから私はあなたを忘れた
残酷だ。

忘れられていたら、愛してくれていたことがわかる。

でも、記憶はひとつもない。

覚えていてくれたらうれしいけど、愛してはなかった、ということになる。

果たして、どっちのほうがいいんだろうか。


「蓮馬くん!」

後ろから声が聞こえた。

玲衣の親友の、瑠奈だった。

俺は、瑠奈に今の全てを話した。

「……残酷だね。どっちにしても悲しいじゃん……」

瑠奈の目には涙が溜まっていた。

俺はもらい泣きしそうになるのをぐっと堪えた。

「玲衣に会いに行く?」

しばらくして、瑠奈が聞いた。

行かないという選択肢もあったけど、せっかくここまで来たし、行くだけいってみようということになった。


「開けるぞ」

俺はそういって、ドアを握りしめ、ゆっくりと開けた。
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