大好きだから私はあなたを忘れた
愛してるから

平松玲衣Side

病室の外で声がする。

私は、記憶喪失だそうだ。

といっても、自分の名前はわかるし、一部だけ忘れてるんだとか。

それも、私がこうなる前、愛していた人、大好きだった人のことを全て忘れてるらしい。

そう言われてみれば、あなたが大好きな人は誰、と聞かれても答えられない。

思い浮かばない。

覚えている人は、喋ったことのないクラスメイトの名前とかそれくらい。

たぶん、私のクラスにはもっと人がいた。

ということは、私のクラスには私が大好きだった人がいたんだ。

存在自体忘れてるわけだから、悲しいという感情はあまり湧いてこない。

だけど、私はその『誰か』を探している。



がちゃり

ドアが開いた。

誰か来る。

少しの緊張で、あまりドアの方向を見ていなかったら、ベッドに影が映ったのがわかって、顔を上げた。


目の前に立っていたのは、知らない男子。

その人は、なんとも言えない表情で、私をただ静かに見つめていた。

ドアの外をよく見ると、女の子もいる。

その人も、同じような表情でこちらを覗いていた。


わかる。

この表情は、私が忘れてしまった人の表情だ。

私はこの人たちを愛していた。

どういう関係だったのかもわからない。

友達?恋人?

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