大好きだから私はあなたを忘れた
「はぁー、眠っ」

瑠奈が、あくびをしながら寝っ転がっている。

そのあと、びゅんと起き上がって、何も言わず一階まで駆け下りていった。

どすどすと足音が家中に響く。

そして数秒後、おばけみたいな音をたてて、猛ダッシュで二階にあがってきた。

そして、その手にはなぜか皿。

「んね、これ食べちゃう?」

肩で息をしながら見せてくる。

「えっ!食べるっ」

その中にあったのは、なんと一切れのケーキ。

しかも、私が大好きなフルーツが盛りだくさん。

「でもなんでケーキ?」

クリスマスなんてまだまだだし、瑠奈の誕生日とかでもないし、大きな行事もなかった。

「いやね、先週お母さんの誕生日でさ、お母さんのケーキ屋さんの友達がつくったんだって」

「え、つくった!?すんご!店のよりきれいじゃん」

本当に、そこらへんのケーキ屋で買うよりもきれいで、おいしそうだった。

「だよねえ。で、これ私のぶんだし、一緒に食べない?」

「マジか!最高」


そのケーキは、見た目と比例して、めちゃくちゃおいしかった。

「こんなおいしいの食べたことない」

「それなっ!」

もうなくなったのか、と二人で空っぽの皿を見る。

どうやら考えていることは同じみたいだった。

「今度さ、うちでケーキつくってみない?」

瑠奈が少し考えたあと、顔を上げて言った。
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