たまさか猫日和
あの銀河スマッシュ殴打事件が、アタマにあるのだろう。
でも私は断固言わねばならないことがある!

「オッサン!」

オッサンがポカンとこちらを向いた。

「なんだよ?」
「止めろよ、イイから!」
「良くない!!」

渚ちゃんも慌てたように、裏から出て来た。
他の客さんも期待した目で私を見ている。
それでも思い切り叫んだ。

「あの黒猫は、オスだから!!」

店の時間が止まった。

「メスじゃないから!」

・・・・・・・

オッサンが眉をひそめた。

「だ、だって、サオがねぇじゃねーか・・・」
「猫のサオは表に出てないの!使うときだけ出てくんの!」
「タマもねーし・・・」
「タマは袋だけあったよ。拾ったときにはもう去勢されてたんでしょ!」

オッサンは悲しそうに言った。

「アイツ、カマなのか・・・」
「いいんだよ、それで。発情期があるとケンカするし、縄張りが広がるから事故に遭いやすくなるし。なにより、これ以上保健所で処分される猫を減らさないと可哀相でしょ」
「カマ野郎か・・・」
「あのさぁ、この店が大好きなのは分かるけど大きな声出さないで」
「い、いいじゃねーか。話するくらい」
「ウザ絡みっていうんだよ」
「ウッッッウザ!?」

言葉に詰まるオジサンの横で、海星がそのくらいにしとけと言うように目配せした。

「そこで、ずっと黒が待ってるよ。早く行ってやって」
「な、なんだ!俺はこんな店、来たくて来てやってんじゃねーんだ」
「ウルサイ。それ以上なんか言うなら去勢するぞ」

渚ちゃんが口をあんぐりと開け、海星がため息と共に脱力した。
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