たまさか猫日和
門田様が帰られた後、店長と二人掛かりで、お買い上げ頂いた商品を段ボールに詰めた。すべて配送するためである。
「今日も素敵だったなぁ」
と、店長が言った。
私も頷いた。
「本物のお金持ちって感じですよね」
「そう。中途ハンパが一番タチがワルイ」
「どうやったら、本当のお金持ちになれるんでしょうね」
店長はそれを鼻で笑った。
「もはや先祖から違うのよ。庶民は自分でコツコツ稼ぐ他ないの。早く『美しの会』に入りなさいよ」
店長は私の一回り上。名前は「草加成美」という。言わずもがなの独身だ。
我が社では、名前の最後に「美」という漢字が付いている人間は、結婚できないと言われており、そのメンバーで「美しの会」なるものが結成されている。当然、私も入会待ったなしの状況だ。
「入ってどーするんですかぁ?」
「何を言ってるのよ。新田さんがいるんだから、入らない手はないでしょ」
新田好美副社長は、春の人事異動で物流管理部門から大抜擢され、目下出世コースの最前線にいる。
「自分のことを『お飾りだ』って言ってましたけど?」
「世の中、何が起こるかわからない。藁でもお飾りでもいいのっ」
金持ちの奥方にもなれないし、
バリキャリにもなれそうにない。
結婚したくないわけじゃないけど、
じゃあ今!すぐ!結婚!という気持ちもない。
一体、ワタシはどうしたらいいんだ?
このままでいいと何で思えないんだろう。
不幸せなわけではないのに、
この生活が来年どころか十年先も二十年先も続くと感じる時、
砂漠に一人で立っているような気持ちになる。
梱包した段ボールに、宛先状を貼り付けた。
自分で、開けるのかな?いや、きっとお手伝いさんが開けるんだろうな。
「今日も素敵だったなぁ」
と、店長が言った。
私も頷いた。
「本物のお金持ちって感じですよね」
「そう。中途ハンパが一番タチがワルイ」
「どうやったら、本当のお金持ちになれるんでしょうね」
店長はそれを鼻で笑った。
「もはや先祖から違うのよ。庶民は自分でコツコツ稼ぐ他ないの。早く『美しの会』に入りなさいよ」
店長は私の一回り上。名前は「草加成美」という。言わずもがなの独身だ。
我が社では、名前の最後に「美」という漢字が付いている人間は、結婚できないと言われており、そのメンバーで「美しの会」なるものが結成されている。当然、私も入会待ったなしの状況だ。
「入ってどーするんですかぁ?」
「何を言ってるのよ。新田さんがいるんだから、入らない手はないでしょ」
新田好美副社長は、春の人事異動で物流管理部門から大抜擢され、目下出世コースの最前線にいる。
「自分のことを『お飾りだ』って言ってましたけど?」
「世の中、何が起こるかわからない。藁でもお飾りでもいいのっ」
金持ちの奥方にもなれないし、
バリキャリにもなれそうにない。
結婚したくないわけじゃないけど、
じゃあ今!すぐ!結婚!という気持ちもない。
一体、ワタシはどうしたらいいんだ?
このままでいいと何で思えないんだろう。
不幸せなわけではないのに、
この生活が来年どころか十年先も二十年先も続くと感じる時、
砂漠に一人で立っているような気持ちになる。
梱包した段ボールに、宛先状を貼り付けた。
自分で、開けるのかな?いや、きっとお手伝いさんが開けるんだろうな。