たまさか猫日和
それからしばらくして、門田さまが慌ただしく来店された。
黒ずくめの服が少々着崩れて見える。バッグもショルダーになっていた。

「時間がないの。コレとコレでいいわ!」
「あ、はい!」

店長が服を抱えて、足早に会計に行く。

「レイラちゃんはどうしました?」
「家にいるわ。最近、キャリーに入りたがらないのよ。それにお腹を出して寝るようになったのよ?私が『レイラ、行くわよ』って言っても返事もしないで寝ているの」
「うふふ、カワイイ」
「私が保護猫活動を始めて忙しいものだから、目まぐるしくてついて行かれないみたい」
「え、活動してるんですか?」
「あっ、そうなのよ。渋谷にこんな沢山猫がいるなんて驚いたわ!目が回るほど忙しいの。私ね、絶対に見ず知らずの他人に、自分がやったことでもないオイタで謝ることなんか出来ないと思ってたの。でも出来るのねぇ。あの子たちの為なら、出来るのよ」

店長が戻ってきた。
包みを掴むと、「ごきげんよう!」と言うなり、体を翻して去って行く。

腹出して寝てるって?
それが本来のレイラちゃんの姿なんだろう。

それからまたしばらくして、
「もう一人家族になったの」
という報告を受けた。

「二人して、ヘソテンで寝ているわ」

門田様の口から『ヘソテン』などという言葉が出るなんて!
お互いに多いに笑った。
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