たまさか猫日和
それは序章に過ぎなかった

フーテン猫

朝、玄関を開けると、そこにソレはあった。

「へ…?ナニこ…ギャアアア!!」

老後、一緒に暮らそうと思ってたヤツ!
転がってる!!

「くっあああああひゃあああああ!」

言葉にならない。
隣りに住んでいる良子叔母さんが、声を聞きつけやって来た。

「どうし…イヤアッ!イヤだぁ!」

見た途端に目を背け、自宅に逃げ帰る。叔父も出て来た。

「デッケーなぁ。何だよ、それ」
「イヤッイヤッイヤッ!どーしたらいいの!?ねぇ!?」
「敷地内で死んでんじゃ、役所も来てくんねーよ。道端なら片付けてくれっけど」
「エッなに!?自分で片すの!?」
「便利屋にでも頼むしかねーな」
「お、オジサンっ!」
「俺はムリ。そんなの、ムリムリムリ」

手でバッテンを作りながら、叔父さんは無情にも去ってゆく。

「はくじょーもんッ!」

そう叫んだが、ムリムリムリ…と言う声が遠くから聞こえてくるだけだった。

イヤイヤイヤ、待って。
玄関前だよ?ねえ?
玄関開けた、真ん前なんだからね?

「ひ、ひっく、えええーん」

とにかく、出勤せねば。
壁沿いに横移動し、大回りして…
って、できるかー!
そんな敷地が下町にあるかーっ!

一度玄関内へ戻り、震える手で電話を掛けた。

「海星!うちに来て!今すぐ!」
「はあ?」
「ムリー!本当にムリー!」
「だから何なんだよ?」
「いるのー!玄関開けたら、2秒でデカいミッキーが!」
「Welcome to Tokyo Dis…」
「止めてっ!英語力要らないっ!」
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