たまさか猫日和
チャーハンを食べ、眠気のこないうちに風呂へ入った。
上がると、もう台所はきちんと片付いていた。

海星が「上で寝ろよ。俺、ここで寝るから」
とソファーに横になっている。
押入れから毛布を引っ張り出して渡した。

「寒くない?」
「ぜんぜん」

この部屋の掃き出し窓は、玄関のすぐ脇にある。

「気づくかな?」
「どーだろな」

申し訳ない気持ちはあるが、並んで寝るスペースもないので、素直に二階へ上がった。

スマホを握ったまま、眠っていたらしい。

ガシャン!

「アアアアアア!?」
という声で目が覚めた。
時刻は午前四時。

慌てて下に降りると、もうすでに海星が捕獲器の中を覗いていた。

「チッ。今日はスズメかよ」
「あああにすんだ!この野郎!テメェどーゆう了見でこんなことしやがんだ!」
「羽根が散らばって大変なんだよな」
「コノッ出せ!出せよ!この野郎!」

ボンボコ暴れる捕獲が私の前に突き出された。

「あれ!?テンちゃん!?」
「ああ、そのテンちゃん様だよ!いったいぜんたい何だってんだ!?」
「テンちゃん、なんでこんなとこにいるの?」
「俺が聞きてぇよぉ!こんな、こんな、恩をアダで返しゃがって!」
「アンタ、金町に行ったんじゃないの?」
「カネモチだかカタクリだか知らねーが、居られっかよ!あんなシケたとこ!」

下に降ろしても捕獲器が壊れそうなほど暴れている。

「これテンちゃんだわ。元ボス猫の」
「天祖神社に居たヤツ?」
「そう」

狭い玄関先に盛大に羽根が散らばっている。
外はまだ真っ暗。そして、寒い。
捕獲器にタオルをかけ直し、朝を待つことにした。
< 29 / 56 >

この作品をシェア

pagetop