たまさか猫日和
また唇が塞がれる。
頭は思考停止したままだ。

「ダメ?」

至近距離で尋ねられる。その熱情のこもった瞳に恐れをなし、反射的に答えた。

「だ、だめ」
「むり」

なぜ質問したのか?
キスの嵐に襲われ、その疑問自体も闇に紛れてゆく。

「ううっんんっ止めっ…んん」

止めない、と宣言するようにキスが深くなる。
横たわっているのに、酔ったような感覚に陥った。海星の体温に、匂いに、重さと圧力に、酔ってしまっていた。これは到底敵わない。本気で嫌なら、誠心誠意お願いするしかない。しかし、肝心の自分が本気でそう思っているのか分からなかった。

気が遠くなりそうなほど、長い時間キスされ続けたように思えた。キスだけで、こんなに沢山の種類があると教え込まれた時間だった。
それでも、海星は離してくれなかった。
身を捩って、うつ伏せになった私抱きしめて、耳や首筋にキスを降らせてきた。

「…んん!」

うつ伏せでは余計に抗えない。
ただ降ってくる感覚を受け取るほかない。
だんだんとその感覚が快感に変わってゆく。
胸もとに手の感触が伝わってきて、ズキズキするほどの予感に震えた。
服がたくし上げられ、熱くて大きな手が私の乳房を掴んだ。

「やっ…!ああ」

くの字に曲がった体をすくい上げられるようにして、仰向けにされた。

「顔が見たい」
海星が吐息を漏らした。

「こうなるのが怖かった」

怖かった…?
なに?どういうこと?
分らない。
涙目で海星を見上げた。

しかし、海星は自分で自分の言っていることが分かっていないみたいだった。
その目は熱に浮かされ、容赦なく次の快感を求めるように突き動いていった。
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