たまさか猫日和
私は一体、何をこんなに必死で弁解しているんだろう?分からない。緊張が限界に達して、パニック状態になった。
「だめだ!もうムリだ!なんで怒られてるのか分からない!」
「浮気を疑われるようなことをしてるからだろ」
その一言に、時が止まった。
「う、うわき?」
誰が?浮気?
「俺が浮気許さないの知ってるだろ」
「浮気っていうのは、アレかな?ワタシが浮気してるってことかな?」
「他に誰がいるんだよ」
「浮気っていうのは、フツー…本命がいる場合にのみ適用されるイレギュラーなイベントでは?」
「どう見ても浮気だろ」
おお…
おおおおお…
「もしかして、私たち付き合ってますか…?」
「もうヤッてんだから、付き合ってるに決まってんだろ」
「おおっと!付き合ってない。それは付き合っているとは言わない!」
「はあああ!?」
海星が本格的に怒りだしたが、私だって人生が掛かっている。
「それは付き合ってないよ!付き合うっていうのは、心の交流も含まれると思うよ!」
「俺は付き合う気持ちもねーヤツと、ヤらねーよ!」
「そうでしたか!ごめんね!ワタシ、初めてなもんで分からなかったわ!でも付き合ってはいないの!これからも清く正しく、この街で生きていきましょう!」
「っざけんな!そんなバカな言い分が通るか!」
「バカでごめんなさいね!そ、そういう責任感を持ってコトに及んでくれたことは、心より感謝するけど、いやそれは本当にありがとう!なんて良いヤツ!だけど付き合ってはいない!従って浮気もしていない!」
そこまで言って、自分の口に急ブレーキをかけた。
薄暗い中でも海星の目が怒りに燃え上がるのを見た。
「浮気じゃない?じゃあ、あれが本命か?」
「本命じゃないよ。あれはサルだよ、ラッパを持ったサル!」
「そのサルと、またメシ食いに行く約束してなかったか?」
「してない!アイツはただの大食いエテ公だから無理!」
「じゃあ、もう会わないのか?」
「いや、ライブは行くでしょ。そ、そんなの、銀河の公演に行くのと同じ感覚だよ」
「それが耐えられないんだよ」
イラついた声に、海星を凝視した。
…え。
ええ?なに?
「私が銀河の公演に行くのが?」
「そうだよ」
「なんで、また?」
「絶対、二人で飲むことになるだろ」
「だったら、なに?」
「それが耐えられない」
薄暗い店内で、しばし考えた。
どこからか、カラオケしている声がする。