シロツメクサの優しい約束〜いつか君を迎えに行くよ〜
築山はにこっと笑うと、私の前に立ちはだかるように回り込んだ。

「ちょっと、どいてよ。邪魔よ」

私は眉をひそめ、築山の傍を通り抜けようとした。しかし築山に腕をとらえられた。

築山は言う。

「今は誰ともつき合う気はないっていうのはさ、失恋前だったからだよね。さっき見てたあの人が失恋の相手なの?」

私は築山の手を振りほどく。

「失恋失恋って、勝手に決めつけないでくれるかな」

築山は小さくくすりと笑う。

「ね、ひとまずさ、俺と友達になってくれない?その気になったら恋人になるってことで。俺、本当にみちえちゃんと仲良くなりたいんだよ」

「その気になんて、一生ならないと思うわよ」

築山の言い回しがおかしくて、私の頬は思わず緩んでしまった。

「そんなに言うなら、仕方ないわ。とりあえず、友達にならなってあげる」

わざと高飛車な言い方をしてみた。

けれど築山はそんなことは気にした様子もなく、素直に嬉しいという気持ちを表すかのように破顔した。

「やった!じゃあさ、今度遊びに行こうよ!あ、その前に連絡先交換しよう」

少し前までは、築山のぐいぐい迫って来るような強引な感じが気に食わなかった。けれど今はそれが、へこみそうになる私の気分を紛らわせてくれている。自分の中のそんな矛盾に内心で苦笑した。

築山は悪い人ではないし、征司にはもう好きな人がいるのなら――。

ずるいことは分かっていた。けれど私は自分の気持ちを騙すように理由をつける。

でも友達でいいって言ってくれているんだから――。

私は築山を道の端っこまで引っ張って行くと、カバンから携帯を取り出した。
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