シロツメクサの優しい約束〜いつか君を迎えに行くよ〜
「へぇ、そうなんだ……」

相槌を打ってから、私は落ち着かなくなった。やむを得ず密着している征司の意外にもがっしりとした胸板や、腕の筋肉が急に意識されてしまう。ドキドキドキドキと、小刻みに胸の奥が震えていた。

あの時見た彼女はきっと、こんな征司の体をよく知ってるんだろうな――。

こんな時だというのに、不謹慎なことが頭に浮かんでしまう。私は慌てて目を伏せた。そして、気づいた時にはぽろっと言葉が口から出ていた。

「征司君の彼女、可愛い人だね。同じ学校の人?」
「えっ……」

征司の声が動揺したのが聞こえた。

「だから、この辺で下ろしてくれていいよ。彼女にこんな所見られたまずいでしょ」

私は下ろしてほしいという意思表示に、やんわりと征司の胸に手を当てた。

「彼女は、他校の子。ていうか、中学時代からの付き合い」

「そうなんだね……。あの、征司君、降ろして?」

しかし、私を抱えていた征司の手に力が入った。

びっくりして見上げた征司は、前を向いたまま突然言った。

「彼女がいようといまいと、俺にとってのみちえちゃんは、大切な幼馴染に変わりないからね」

「征司君、そんなこと言って。彼女、嫌なんじゃないかな……」

「だって、本当のことだから」

征司はそう言うと私を優しい目で見た。

その視線を受けたら、これまでの自分の態度を謝りたい気持ちになった。昔と変わらない優しさのままで私に接してくれる征司。今さらだけれど、避けるような態度を取っていた自分がひどく恥ずかしく思えた。そうだ、征司が大切な幼馴染であることに変わりはないのだ。
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