シロツメクサの優しい約束〜いつか君を迎えに行くよ〜
私はおずおずと口を開いた。

「あのね、征司君。ごめんなさい。征司君はいつも笑いかけてくれたのに、私、ずっと変な態度を取ってしまってた。中学生になった辺りから、もらった手紙に返事とか出さなくなっちゃって、自分で連絡途絶えさせたから、それで気まずいなって思ってた。嫌いになったわけじゃなくて、顔を合わせにくかっただけなの」

すると征司は苦笑した。

「正直言うと、傷ついたよ。だけど多分、そういうことなのかなって思ってもいた」

私はしゅんとして謝った。

「ほんとに、ごめんね」

「いいよ、もう。俺のこと、嫌いになったってわけじゃないんだよね?それが分かっただけで、安心できたから」

征司の柔らかい笑顔がまぶしく見えて、私は戸惑う。その動揺を隠すように、私は目を逸らして言った。

「保健室はすぐそこだから。もうここで大丈夫だよ。連れてきてくれて、ありがとう」

「どういたしまして」

征司は私をそっと下ろす。それから戻ろうと背を向けかけた足を止めて、振り返った。

「あのさ。これからはまた、昔みたいに普通に笑ってくれたら嬉しいんだけどな」

そう言うと、征司は私の返事を待たずににこっと笑う。

「お大事に」

そのひと言を残して、急ぎ足で私の前から去って行った。

ぐんと背が伸びて大人びて見える征司の後ろ姿を見送りながら、私はぼそっとひとり言をつぶやいた。

「嫌うどころか、ドキドキしちゃったじゃない……」

その時、少し前に征司が笑いかけてくれなくなったことを哀しく思った理由が、分かったような気がした。だけどもう遅い。征司には好きな人がいるんだから。だったらせめて、征司の幸せを願いたいと思った。
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