シロツメクサの優しい約束〜いつか君を迎えに行くよ〜
征司もまた私に気がついた。私の隣にいた築山にちらと目線を走らせたのが分かった。

私は息を飲んだ。

どうしよう。挨拶した方がいいのだろうか。それとも知らないふりをした方がいい?

築山は、立ちまどった私を不思議そうに見た。私の視線の先を辿り、征司の姿を認めると私に訊ねた。

「同じ学校の人?」

「うん……」

「そうなんだ」

築山はそう言うと人懐こい笑顔を浮かべて、ゆっくりと征司たちに近づいて行った。

「こんにちは」

その声に先に応えたのは、征司の隣にいた女の子の方だった。

「こんにちは」

彼女は築山と私を見て、屈託なくにっこり笑う。

改めて向かい合って見た彼女は、まさに美少女という言葉がぴったりの女の子だった。ふわふわした印象が可愛らしい。

彼女の声に征司ははっとしたように目を瞬かせた。それから、ぎこちない様子で笑う。

「どうも、こんにちは。もしかして、みちえさんのお友達ですか?そちらもデート?楽しんでくださいね!」

築山は笑顔のまま流れるような口調で続け、二人が返そうとする言葉も聞かずに、私の手を取って歩き出した。

「あ、ちょっと、築山くん」

「映画、早く行こう」

「う、うん。……あの、じゃあ、また学校で」

私は征司から目線をそらしてそう言うと、築山に引きずられるようにしながらその場を離れる。最後に目に入った征司の眉間には、しわが寄っていた。
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