シロツメクサの優しい約束〜いつか君を迎えに行くよ〜
「適当なこと言わないでよ」

涙を頬に残したまま文句を言う私に、築山はくすっと笑う。

「あのさ。すぐには気持ちを切り替えられないかもだけど、やっぱり俺じゃ、だめかな?」

私はうつむいた。築山の気持ちはもう知っているけれど、すぐには頷けなかった。

「今はまだ、築山くんの気持ちに応えるのは、難しいと思う」

築山は身をかがめると、私の顔を覗き込んだ。

「じゃあ、違う言い方しようか。ちょっとくらいは俺のこと、好きって思ってくれてる?」

私は少し考え、それから曖昧に答えた。

「今は、友達として好きだと思ってるけど……」

「友達として、ね。でも、嫌いじゃないってことだよね?」

築山はにっと笑った。

「それ位の気持ちから始めたっていいんじゃない?ねぇ、みちえちゃん、俺と付き合おうよ」

私は目を伏せた。

「でも……私、築山くんが言った通り、失恋したばっかりだよ。しかも同じ人に二回目の失恋。気持ち、ふらふらしてるよ。それでもいいっていうの?そんなの嫌じゃないの?」

「そういう聞き方をするってことは、少しは前向きに考えてくれているって思っていいんだよね?俺は、みちえちゃんを他の男にとられたくないんだ。だから、付き合いたい。これからでいいから、俺のことを男として意識して、ちゃんと見てほしいんだ」

「そんな始まり方で、付き合っていいものなの?」

私はおずおずと言った。征司に気持ちを残したままでは、築山を傷つけることになるのではないかと思った。それなのに、彼はなおも言う。

「俺はそれでもいい。ねぇ、みちえちゃん、俺の彼女になってくれない?」

「……こんな私でいいのなら」

「そんな風に言わないで。俺は、みちえちゃんがいいんだよ」

築山は微笑み、それからふっと真面目な顔をして、そっと私に訊ねた。

「キス、してもいい?」

「わざわざ聞くなんて、築山くんてばいい人すぎるよ」

くすっと笑って目をつぶった私の唇に、築山はそっとついばむようなキスをした。
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