シロツメクサの優しい約束〜いつか君を迎えに行くよ〜
征司の話を聞いていたら、胸がズキリと痛んだ。気持ちを騙す――そのひと言が刺さった。

私は目を伏せながら細い声で言った。

「だから、何?どうしたいってこと?私、今、付き合っている人がいるんだよ」

「うん、知ってる。クリスマスに映画館で会った彼だよね」

本当は、征司の長い告白に気持ちが揺れた。だけど今の私は、築山と付き合っている。私を大事に思ってくれている彼をあっさり振って、すぐに征司の気持ちを受け入れるなんてこと、できない……。

私はギュッとこぶしを握って、やっとの思いで口を開いた。

「……ごめんなさい」

謝る私に征司は静かな声で言った。

「謝らないで。きっとそう言われるだろうって分かっていながら、話したんだ。これから受験勉強も本格的にやらなきゃだし、もしかしたら、もう会えなくなってしまうかもしれないって思ったから。自分勝手なのは分かってたけど、気持ちにケリをつけたかった。みちえちゃん、今日は俺のわがままに付き合わせてしまって、本当にごめんね」

私は首を横に振った。

征司は少しだけ寂しそうに笑う。

「もう一つ勝手なことを言わせてもらえるなら、少しずつでいいから、もしも会った時には昔みたいに仲良くできたら嬉しい」

「……そんなの、難しいよ。今の話を聞いたらなおさら」

「そう、だよね。ごめん」

今日何回目かの「ごめん」を言うと、征司はぎこちない笑顔を浮かべた。そして思い出したように言う。

「あの彼は、みちえちゃんのこと、大事にしてくれてる?」

私は頷く。

「うん」

「それなら、良かった。――じゃあ、時間作ってくれてありがとね」

「……あの、受験勉強、頑張ろうね」

他に言うべき言葉が見つからなくて、私はそれだけを言うと、くるりと踵を返して征司の前から立ち去った。
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