シロツメクサの優しい約束〜いつか君を迎えに行くよ〜

さよなら。ありがとう

「みちえちゃん、最近元気ないよね?」

塾帰りのファミレスで、ちょうどメロンソーダを飲み終えた時、築山が私の顔を覗き込んで言った。

「え?そんなことないよ」

「そんなこともあるでしょ。俺には分かるんだよ。話してみない?」

「別になにもないって」

築山は私の顔をじいっと見て、ぼそっと言った。

「もしかして、あの人のこと?」

「えっ」

うっかり反応してしまい、私は目を泳がせた。

「当たりか」

築山が苦笑を浮かべた。

「何?告白でもされたの?」

その訊ね方があまりにも優しかったから、つい、口を割ってしまった。

「そうでもあるような、そうでもないような?あ、でも、付き合ってる人がいるからって、私、断ったから」

彼を傷つけるようなことを言ったつもりはなかったのに、築山が哀しそうな目をした。しかし、声だけは明るく言った。

「いつかは俺のことだけ見てくれるって思ってたんだけどなぁ。やっぱり、みちえちゃんの気持ちを変えることはできないのかな」

私は身を乗り出して、築山に言う。

「私、断ったって言ったじゃない」

「だけどほんとは、頷きたかったんじゃないの?」

「そんなことは……」

「だったら、どうしてそんな泣きたいような顔してるの?」

「そんな顔してないよ……」

「ねぇ、みちえちゃん。もう強がらなくていいよ。我慢しなくていいから」

「我慢なんてしてないよ」

築山は目元を緩めて私を見た。

「じゃあ、言い方変える。素直になっていいんだよ」

その言い方に、築山が優しい別れ話をしようとしてくれているのが分かった。私はぎこちなく微笑んだ。

「……私、素直じゃなかったかな」

「そうだね。だいぶ。そんなところも可愛いけどね」

築山はくすっと笑う。

私は彼の顔を真っすぐ見ることができずに、うつむいた。

「ごめんなさい……」

「謝らないでよ。俺、楽しかったよ」

築山は優しい笑みを口元に浮かべる。
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