シロツメクサの優しい約束〜いつか君を迎えに行くよ〜
「恋人ごっこみたいだったけど、みちえちゃんと付き合えて良かったって思ってるよ。――そろそろ受験勉強、追い込み頑張らないとだろ?お互いに志望校に入れるよう頑張ろうね。それで、何年かたって万が一にも再会することがあったらさ、あの時俺にしとけば良かったって後悔するくらい、いい男になっててやるからね」

築山を本当に好きになれたら良かったのに――。考えても仕方のないことが頭に浮かんだ。口に出してもいけない言葉だと思った。代わりに私は彼に笑顔を見せた。

「築山くんなら、きっとそうなれるね。――今まで、本当にありがとう」

こうして、私は築山との関係を終わりにした。

一人になった私は、ふとした拍子に思い浮かべてしまう雑念から逃げるように、受験勉強に時間のすべてを費やした。長かった闘いが終わり、結果発表を待つだけとなったある日のことだ。

私はふと思いついて、征司に手紙を書こうと考えた。

小学生だった頃のように、今の気持ちを素直に書いてみれば、私の中で何かが変わるかもしれないと思った。完全に征司への想いを断つものになるのか、それとも征司への想いが募ることになるのかは、分からなかったけれど。

「征司君へ――」

便箋の一行目に幼馴染の名前を書いたら、心がふわっと温かくなった。

――本当は、好きでした。これを書いている今も、あなたが好き。今さらだけど、私の気持ちを伝えさせてほしい。

そう書き出して、懐かしい気持ちがよみがえるままに、私はその頃の思い出とその時の気持ちを書き記していく。ペンを走らせながら、結局自分は、征司のことを忘れていたようで忘れていなかったということに、気がついた。いつだって私の心の中には征司の存在があった。そのことを伝えたかった。そして最後にこう書いた。

今まで素直になれなくてごめんなさい――。

けれど手紙は渡さなかった。こんなものを今さらもらっても、征司を困らせるんじゃないかと思った。なぜなら、あの告白からもうずっと顔を合わせていなかったから。

かと言って捨てがたく、その白い便箋を折り畳んだ私は、卒業アルバムの一番最後のページにこっそりと挟み込んだ。この甘酸っぱい気持ちを、いつか笑って懐かしむことができる日が来るのを期待しながら。
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