シロツメクサの優しい約束〜いつか君を迎えに行くよ〜
「え、でも……」

征司が戸惑ったように瞳を揺らした。まさか私が一緒に行くと言うとは思っていなかったようだ。

それもそうよね。気まずい顔をしたくせに、一緒に、だなんて……。

矛盾する自分の気持ちを、私は心の中で嗤う。だけど今、征司の近くにいたいような気がした。

ためらうような顔をしている征司に向かって、私は声をかけた。

「行こう」

指示された買い物を済ませると、私たちは手分けして荷物を持つ。

重い物は征司が持ってくれた。

「力持ちなんだね」

それを見た私は感心して、思わず口にした。

征司はまぶしそうに目を細めると、苦笑する。

「一応これでも男なんで……。あのさ、みちえちゃん」

「えっ、あ、うん、何?」

他のみんながいる所では苗字で呼んでいたのが、急に昔のように名前で呼ばれて戸惑った。

「今もあの時の人と付き合ってるの?」

築山のことを言っているのだと分かった。

「えっ。……と、別れたよ」

「そうなんだ。じゃ、今は?」

なんとなく素直に答えたくなくて、私ははぐらかすように質問に質問で答えた。

「征司君はどうなの?」

「あぁ、うん。一人だよ」

高校の時の彼女と別れてからは、ずっと一人だったということ……?

図々しいような期待をしそうになって、私は慌てて征司から目を逸らす。ありきたりな言葉を口にした。

「いい出会いがあるといいよね、お互いに」

笑って流してくれると思った。それなのに、征司は少しだけ間を置くと、つぶやくように言った。

「出会いか……。俺はあったと言えば、あったかな」

そう言った時の顔がとても優しく見えて、私は面白くないような気持ちになった。彼の告白を断った私が、持っていい感情のはずがないと分かっているのに、胸の奥がちくりとする。

「へえ、そうなんだ。良かったね……」

口ではそう言いながら、突然、上手に笑顔を作れなくなった。それに気づかれたくなくて、私はわざと太陽のある辺りを見上げて顔をしかめる。

「まだ、暑いね」

その日を最後に、また、征司とは顔を合わせていない。
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