シロツメクサの優しい約束〜いつか君を迎えに行くよ〜
付き合うようになってしばらくして、憲一の部屋に誘われた。きっと、そういうことが起きるんだろうと分かっていながら、私は頷いた。

案の定そういう雰囲気になって、彼のベッドに押し倒された。

それまでも彼とは軽いキスくらいは交わしていたけれど、フレンチ・キスは初めてだった。初めてだから分からず、されるがままに彼の舌を受け入れていたけれど、本心は嫌で嫌でたまらなかった。

憲一は唇を離すと、私のワンピースのボタンを外していった。

彼の指の動きを目で追いながら、私はドキドキしつつも不安だった。

「あの、私、初めてなの……」

「心配しないで。優しくするから」

彼はそう言うと、私の胸元をはだけてブラをずらした。現れた突端に吸い付くと、執拗に舌で舐めながら、手を私のショーツの隙間から差し入れた。

「あっ……!」

その指先で突然敏感な部分に触れられて、驚いた私はきゅっと脚を閉じた。その瞬間、心の奥から、体の芯から、嫌だという声が聞こえたような気がした。

「待って……。あっ、いやっ!」

私の敏感な部分を離れない彼の手から、私は身をよじって逃げようとした。

気持ち悪い。ちっとも気もちよくなんかない……。

憲一がようやく私の体から手を離した。

「みちえ……?」

私は胸元を隠しながら彼に言った。

「ごめんなさい、できない……」

憲一はショックを隠せないという顔をした。けれど、彼は言ってくれた。

「ごめん、気持ちよくなかった?もしかして、まだそういう関係になるのは早かった?」

「ごめんなさい、私にはまだ早いみたい……」

憲一はいい人だったと思う。優しい人でもあった。それなのに、この人に触れられたくないと思ってしまったこの時の感覚は、セックスに対する怖さのようなものを私に与えてしまった。相手が誰であっても、私には受け入れられないのではないか。あるいはもしかすると、私はセックスが嫌いなのではないかと思った。

憲一はふうっとため息をつくと、私を抱き起こして言ったのだった。

「みちえがそういう気になるまで待つよ」

「……ありがとう、ごめんね」

いつかはそういう気持ちになるんだろうか――。

そう思いながら、私はその後も憲一と付き合っていた。しかしある日、私たちの関係は終わる。
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