シロツメクサの優しい約束〜いつか君を迎えに行くよ〜
征司はくるりと向き直ると、私の顔を見て、はぁっとため息をついた。

「まったく、なにやってるの?」

「だって……」

仕方ないじゃない。もう征司君とは会うこともないって思っていたんだもの。言い訳なのは分かってる。だけど私なりに他の人を好きになろうとして、頑張ってみただけだったの――。

そう言いたいのを我慢して飲み込み、私はただ黙り込んだ。

すると征司が身をかがめて、私の顔を優しい目で覗き込んだ。

「ねぇ、みちえちゃん。高校の時はふられちゃったけど、もう一度チャンスをくれないかな?」

「な、何を急に……」

征司の言葉に胸が高鳴った。けれどそれを隠すように、私はわざとぶっきらぼうな態度を取る。

「征司君、去年の秋に言ってたじゃない。いい出会いがあったって。その人に振られでもしたの?だから、今さら私にそんなことを言ってるの?」

「あれは、みちえちゃんのことだよ」

「え?」

「俺、みちえちゃんのこと、絶対に大事にするよ」

そう言うと、征司はしゃがみこんで何かを拾い上げる。それからもう片方の手で、私の手をそっと取った。

「みちえちゃん、昔も今も変わらず好きだよ。どうか俺と付き合ってほしい。そして、あの時の約束を叶えさせてほしいんだ」

言い終えると、征司は私の手のひらに白い小さない花を乗せた。

「シロツメクサ……」

足元に目を落とすと、そこにはクローバーとシロツメクサが地面を覆っていた。

「気づかなかった……」

つぶやく私に征司は言った。

「この花言葉は、約束。でも、他にも意味があるんだってね」

私はシロツメクサを眺めながら、その言葉を口にする。

「私を、想って……?」

「うん」
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